(2010/09/24)
ビジネスには変えてはならない「柱」が必要
――初代・飯田料理長の料理が革新的なものであり、その遺伝子を現在のスタッフの方々も受け継いでおられる、というわけなんですね。
望月「そうですね。飯田進三郎の、アラスカの料理というのは、フランス料理、イタリア料理、といった風に一カ国にカテゴライズされるものではなく、『日本人が美味しいと思う西洋料理』と形容するべきものです。飯田はあらゆる西洋料理の手法を駆使して、日本人にとっての最適解を見つけたのだと、思います。
たとえば、アラスカのエスカルゴはデミグラスソースが特徴です。バターを詰めてオーブンで焼く、一般的なブルギニヨンではありません。ブルギニヨンのエスカルゴはグロテスク過ぎて、食べにくいと思われませんか?」
──そうですね。
望月「見た目から食べやすく、そして当然ながら美味しくいただけるように──と、飯田進三郎が開発したのが、アラスカのデミグラスソースのエスカルゴなのです。
そのように、各国の料理をアレンジした、飯田進三郎のアラスカ流西洋料理がベースとなって、現在の各店舗の料理人が、土地柄や気候やお客様に合わせたアレンジを加える。
読者の方のビジネスにも通じる話ではないかと思うのですが、決してそこだけは揺らいではいけない、柱になる部分が、何事にも必要なのではないかと思います。それを初代支配人である祖父の望月豊作が、開店の際に料理長に飯田進三郎をスカウトしたことで確立できたアラスカは、運が良かったのかもしれません」
──しかし、その味を、変化を続けながら82年間保ち続けるのは並大抵のことではないと思います。全てのベースとなる飯田料理長の料理の中でも、具体的に、特にこれは頑なに守らなければいけない、というものなどはあるのでしょうか?
望月「それは、先に申し上げたデミグラスソースと、それ自体もメニューにあり、全ての料理の基礎にもなる、コンソメスープですね。これがアラスカの命だと思います」
──その2つだけは、絶対に変えてはいけない。
望月「はい。特にコンソメスープは、従業員の教育にお力を貸していただいている、コンサルタントの松村慶伊子先生からも、『絶対にこの味だけは守らなければいけない』というお言葉をいただきました。もちろん、最初に申し上げたように、肉やタマネギなどもずっと同じものを使っているわけではありませんので、コンソメスープやデミグラスソースの味を守るために、常に細かい変化を重ねてはおりますが、この味だけは絶対に守らなければいけないと考えております」
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筆者紹介
望月 薫 Kaoru Mochizuki |
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