身近に潜む訴訟のリスク

(2011/04/10)
mkj110410-00.jpg
東日本大震災により、被災されました皆様、およびご家族の皆様に対し、謹んでお見舞い申し上げます。一日も早い復旧・復興を心からお祈り申し上げます。

未曾有の大震災に際し、改めて地震、そして津波の恐ろしさを痛感させられました。このような困難な時期を乗り越えるためには、私たち日本人が一丸となって頑張るしかないと思うのですが、まず一人ひとりが「自分のできること」に取り組むことが大切ではないでしょうか。私ことイトカツも、法律の専門家として何ができるか、いろいろ考えてみました。

そこで、結論。やはり私にできることといえば、法律に関わる情報発信です。「身近に潜む訴訟の地雷」の第1回となる今回は、被災地で今、大きな問題のひとつとなっている人員整理や採用取り消しに関する問題にスポットを当て、大震災と雇用について考えたいと思います。


被災地であれば、解雇は認められるのか?

今回の震災で、事業所が損壊してしまった、震災後の計画停電で工場の操業がうまくいかないといった企業も少なくないと思います。そういった厳しい状況を迎え、倒産や人員整理を考えている方も、いらっしゃるのではないでしょうか。

労働基準法第20条では、事業主が労働者を解雇しようとするときは少なくとも30日前に予告が必要であり、予告しない場合は平均賃金の30日分を支払わなければならないとしています。が、同時に「天災事変その他やむを得ない事由のため事業の継続が不可能となった場合」や「労働者の責に帰すべき場合」であれば、労働基準監督署から解雇予告の除外認定を受けた場合、平均賃金の30日分を支払うことなく即時解雇することができると記されているのです(解雇予告の除外)。

とはいえ、「震災で経営が厳しければ、解雇してもいいんだ!」と早とちりしないでください。

震災という理由があれば自由に解雇できるというわけではありません。震災による減収・経営難を理由とする解雇は、以下の4つの条件を満たさなければ違法となります。

 1. 人員削減の必要性がある
 2. 解雇しないための経営努力がされた
 3. 解雇される者の人選が合理的である
 4. 事前に従業員への説明や協議を尽くした

上記のような条件を満たさないままに解雇してしまえば、後々大きな火種になってしまう可能性があります。まして、ちょうど経営が厳しい状況なので、震災に便乗して解雇してしまおうと考えるなどは言語道断。震災だから許されるだろうという気持ちでいると、後からとんでもないトラブルを呼び込むことになるかもしれません。

被災地であってもそれぞれの企業の実態に即して判断されるため、「被災地であれば、解雇は認められる」とか「解雇しやすい」ということはありません。

また、解雇しか選択肢がないわけではありません。「雇用調整助成金」など各種の企業支援制度を活用し、雇用を守ることを考える道もある、というのをお忘れなく。

mkj110410-01.jpg



雇用調整助成金について詳しくはこちら
http://www.mhlw.go.jp/general/seido/josei/kyufukin/a-top.html
(厚生労働省 事業主の方へ給付金のご案内)



筆者紹介

伊藤 勝彦 Ito Katsuhiko
弁護士
弁護士法人みお代表
1973年静岡県生まれ。東京大学法学部卒業の年に司法試験合格。弁護士・司法書士・社会保険労務士・行政書士など総勢50名を擁する総合法律事務所の代表を務める。交通事故による後遺障害問題・企業法務など専門性をとくに要するリーガルサービスも提供している。
http://www.miolaw.jp/

『サービス残業という地雷』 (伊藤勝彦著)

 

back number

HOME
presented by 幻冬舎メディアコンサルティング